「無借金の名古屋企業に、隠れた「城」があるって本当?」
株式会社ソフトテックス | 名古屋の42年企業が東証に上場しようとしている。この会社、実は「超優良企業」の条件をほぼ全部満たしています。
自己資本比率63%・外部負債依存率0.2%とほぼ無借金経営、手元現金9億6千万円(売上の27%)という名古屋の老舗IT企業。医療ITサービスという「隠れた城」の構造と、今期営業利益が前年同期比40%減となった「先行投資」の中身を解剖する。
この記事の3つの学び
- 自己資本比率は2021年の45.4%から2025年に63.1%まで上昇し、外部負債依存率は0.2%とほぼ無借金経営。現金及び現金同等物は約9億6千万円で年間売上高35億7千万円の27%に相当する
- 売上の26%を占める医療ITサービス(レセプトソフト「ORCARE」)は、病院がシステムを乗り換える際のコスト・リスクが極めて高いため高いスイッチングコストを持ち、景気に左右されにくいストック型収益の基盤になっている
- 今期(第43期)は中途採用中心から新卒・第2新卒中心への採用方針転換や社内システム移行費用により営業利益が前年同期比40%減となったが、これは将来の人件費単価低減と文化浸透を狙った先行投資と読める
突然ですが、質問です。「優良中小企業」って、どんな会社だと思いますか?
売上が大きい?利益が出ている?有名な会社?違います。本当に強い会社には、共通した「骨格」があります。
今日ご紹介するのは、株式会社ソフトテックス。愛知県名古屋市に本社を置く、創業42年のIT企業です。2026年3月、東京証券取引所(スタンダード市場)と名古屋証券取引所(メイン市場)への上場を申請しました。
この会社の決算書を読んで、私は正直驚きました。売上高は5年間でじわじわ増え続け、借金はほぼゼロ、手元現金は9億6千万円、自己資本比率は63%。この数字がいかに異常に優秀か、一緒に読み解いていきましょう。
まず「ソフトテックス」って何をしている会社?
一言でいえば、「ITシステムを作る会社」です。仕事は大きく2つに分かれます。
一つ目は「ソフトウェア開発サービス」。企業や官公庁が必要とするITシステムを受注して開発する事業です。売上全体の74%を占めます。
二つ目は「医療ITサービス」。病院や診療所で使われるレセプトソフト(診療報酬の請求書を作るためのシステム)の導入・運用サポートです。売上の26%を担っています。
ポイントはここです。ソフトテックスは、「なくなると困るシステム」を得意としている会社です。防災システム(国土交通省仕様のデータ収集システム)、物流倉庫管理システム、病院のレセプトソフト——どれも、止まったら大変なものばかり。
こういうシステムを抱えた顧客は、なかなかベンダーを変えません。変えるコストとリスクが大きすぎるからです。つまり、一度取引が始まると長く続く。
5年間の成績表を見てみよう
売上高の推移を見ると——2021年3月期:29億円。2022年3月期:30億5千万円。2023年3月期:30億9千万円。2024年3月期:33億8千万円。2025年3月期:35億7千万円。5年連続で増加しています。
当期純利益は——2021年3月期:1億2千万円。2023年3月期:9千8百万円(ここだけ少し下がる)。2024年3月期:1億9千万円。2025年3月期:2億1千万円。2023年に一度落ちていますが、すぐ回復して過去最高益を更新しています。
自己資本比率は——2021年:45.4%。2025年:63.1%。5年間でどんどん上がっています。40%を超えれば優良、60%を超えれば超優良と言われます。ソフトテックスは63%。しかも、外部負債依存率(借金への依存度)は0.2%。ほぼ無借金経営です。
「9億6千万円の現金」が意味すること
決算書には、現金及び現金同等物の期末残高として963,394千円という数字があります。約9億6千万円の現金が手元にある、ということです。
年間売上高が35億円の会社が、9億6千万円の現金を持っている。比率にすると27%。売上の4分の1以上が現金で手元にある計算です。
これが何を意味するか。リーマンショックが来ても、コロナが来ても、顧客が1社突然いなくなっても、しばらくは自力で生き延びられるということです。銀行から借りる必要がない。投資家に頭を下げる必要がない。だから、経営者が目先の数字ではなく、長期的な判断ができる。
9億円の現金は、ソフトテックスが「転ばない力」を持っていることの証明です。
ここまで読んで、「なんか良い会社だな」と思っていただけましたか?でも実は、この先がもっと大事です。
特に気になる点があります。今期(第43期)の営業利益が、前年同期比40%減という衝撃の数字になっています。売上は増えているのに、利益が40%も落ちている。これは何を意味するのか。
それと、医療ITサービスの売上比率26%という数字が持つ、他のITサービス会社にはない「隠れた競争優位性」。さらに、2028年3月期の目標として「売上高42億円、経常利益率9%、従業員390名」を掲げていますが、この目標は達成可能なのか。
続きを読んでください。優良企業の「表の顔」だけ見ても、判断を誤ります。この先では、数字の裏にある現実と、私なりの評価を正直に書きます。
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